創作の箱庭

オリジナル小説置き場。企画物やら短編やら長編やら。ファンタジックなの多め?

海に焦がれて〜1000チャレ1

前書き

毎日文章書くようにしたいな、ってことで、毎日1000文字以上の文章を書くチャンレンジ企画を今日からスタート。ルールはこちら↓
・1000文字以上、書いたら成功。失敗しても途中までをアップ。書けなかった日も所感的なのはアップする
・1日は、起きてから寝るまでとする。なので、深夜投稿は前日換算。
・1日ずつまとめるんじゃなくて、毎日続きを書いていく。書いていくうちに完結したら別の話をスタート。
・完結 or ある程度たまったら、まとめて記事にする。
そんな感じで今日からスタート。
1万字くらいの文章書こうぜ、って考えてたネタをこちらに回します。

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「浩一君は、どれだけ一緒にいても、私を見てくれないみたいだから」
 ーーだから、別れてください。
 渚浩一がそうやって女と別れるのは、いったい何度目のことだろうか。
 ある程度整った顔立ちに、どこを見ているのか分からないような不思議な空気。女はそんな謎めいた姿に惹かれてしまうようだ。
 一方的に、女の方が好きになって、告白して、浩一はいつだってそれを断らなかった。それで、恋人同士になっても、一向に自分のことを見てくれない浩一に業を煮やした女の方から、さよならを告げられる。大体一ヶ月から半年くらいのスパンでそれを繰り返していた。
 寄ってくる女も、浩一もいい加減分かればいいものを、女たちは自分こそは浩一のハートをゲットできると勘違いし、興味のない浩一は、告白をオーケーしたところで何が変わるとも思っていないらしく、ちっとも断るってことを覚えやしない。
 それでとばっちりを食らうのが、浩一の親友を称する、佐藤健吾だった。紹介した手前、慰める必要があったり、サークル仲間だったから、しばらくサークル内がギスギスしたり、馴染みの居酒屋に行きにくくなったり、まだ大学生活も一年目だっていうのに、どれだけの修羅場をくぐり抜けてきたことか。
 そして、今日もまた浩一は女に振られ、振った側のはずの女が泣くのを健吾が慰める羽目になる。それでおこぼれに預かれれば、まだこっちにもメリットはあるんだが、そんなことは一切ない。女ってのは、影のあるイケメンにコロッと騙されて、素直でバカ正直なことだけが取り柄の凡人には興味がないらしい。本当にイヤになる。
 それでも、健吾が浩一の(自称)親友をやめられないのは、健吾自身、浩一の不思議な空気に魅了されてしまったからだ。特別頭がいいわけでもなく、運動ができるわけでもない。それなのに、目が離せなくなる。相手はこちらのいことを少しも見やしないのに、なぜだか惹かれてしまう。渚浩一とはそういう男だった。
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「なぁ、浩一ぃ~。海行こうぜ、海」
 前期末テストも最終日。明日から二ヶ月にも及ぶ夏休みだ。浩一も健吾も同じサークルに所属しているが、テニスサークルとは名ばかりの適当な飲み会ばかりを繰り返しているユルユルサークルだから、長期休み中の活動は完全休み。仲のいいもの同士、個別で飲み会をすることはあっても、サークルとしては何もない期間が始まる。
 それなりの規模のサークル内において、健吾のポジションは中心メンバーに近く、1年生ながら、小さなイベントの幹事を何度か努め上げていた。おかげさまで、夏休み中の予定もいくつかお誘いがある状況だ。
 対する浩一の方は、健吾に誘われたから入ったサークルで、意欲もなにもなく、イベントに参加こそすれど、他のメンバーとは相手からアクションがない限り、まったく交流を取ろうとしない。当然、健吾のついでに誘われたような飲み会以外の誘いはなし。そうなれば、浩一が夏休み中、ほとんど家から出ずにいるだろうことは明白だ。高校時代だって、健吾が外に連れ出さなければ、日がな一日家でぼーっとしていたのだ。大学生になったからって、それが突然変わるわけがない。せっかくの四度しかない夏である。楽しまなければ損だ。

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