創作の箱庭

オリジナル小説置き場。企画物やら短編やら長編やら。ファンタジックなの多め?

2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

片思いのその先へ──のべらっくす第13回

毎月おなじみ企画の時間です。 novelcluster.hatenablog.jp 今回のテーマは「魚」幼なじみ三人の三角関係恋模様(片思い視点)でございます。今までで初めてテーマが後づけです。どーしても切ない片思いモノが書きたかったので、魚をくっつけました。 最近、…

海に焦がれて~1000チャレ19

「それで、けんごくんはこれからどうするの」 アキから聞いた話は、大事なところがすっぽりと抜け落ちていて、これだけでは何があったのか、浩一がどうしたいのか、まではわからない。「その空白の三年間。それを突き止める」 浩一が記憶が無いと言った三年…

海に焦がれて~1000チャレ18

後で聞いたところによると、その日は大潮に当たる上に、遥か彼方の海上を台風が通っていて、天気はいいのに波はずいぶん高かったらしい。遊びに夢中だった三人は、いつもと違う海の様子にもまったく無頓着だった。 だから、その瞬間、何が起こったのか、すぐ…

海に焦がれて~1000チャレ17

いくら大人たちがたしなめても、好奇心旺盛な子どもたちは、何度も何度もそこに足を運ぶ。 心配した親たちは、眉唾ものの伝説を話し始める。あの岩場から海に落ちれば、竜宮城に連れ去られて二度と戻って来られなくなる、と。ただ、そう口にする大人たちは、…

海に焦がれて~1000チャレ16

浩一、アキ、それから、茂。小学五年生の夏。 その頃、三人のリーダー的存在は、浩一だった。何をするにもまず先頭に立ち、考える前に飛び出していって、アキと茂はそのあとを必死で追いかけるはめになった。 // 「はぁ~?」 アキの言葉を遮って、健吾は頓…

海に焦がれて~1000チャレ15

見つめた浩一の瞳の中には何も映っていなかった。この部屋も、外も景色も、目の前にいる健吾の姿でさえ、その目は現実にあるものは何も映していない。ただゾッとするほどの闇が広がっていて、勢い込んで口火を切った健吾はその勢いを急速に失ってしまった。…

海に焦がれて~1000チャレ14

晩御飯を食べ終わった頃には、周囲は宿の外はすっかり真っ暗になっていた。 夕飯には、広間で地元で採れた海鮮に舌鼓を打った。そこには、浩一の幼なじみの茂が採った魚も混じっているのかもしれないが、茂の母親の女将は海水浴シーズンでごった返す広間と厨…

海に焦がれて~1000チャレ13

秀和学園を進学先に選んだのは、単純にいつもの連中とつるむのに飽きたからだった。 自分と同じで明るくてチャラくて、軽く彼女を作ろうとして失敗して、でも気軽にしゃべる女友達はいっぱいいて。中学の頃、健吾の周りにいるのは、そんな連中ばかりだった。…

海に焦がれて~1000チャレ12

結局、今日は解散ということになった。健吾は浩一とともに宿に行き──ここも浩一の幼なじみのうちが経営しているらしい。世間が狭すぎる町というのも考えものだ──アキは一人、家に戻っていった。あの女、美海は、最近浜で倒れているのを近所の人が見つけて保…

海に焦がれて~1000チャレ11

女は何かを考えるように顎に手を当てて首をかしげた。眉間に小さな皺が寄る。「落ちて、溺れた……じゃあ、あそこはやっぱりただの海だったのね」 ぽつり、と残念そうに女が呟く。「ただの海って、海は海だろ? さっき聞いた竜宮伝説ってやつが関係すんの?」 …

海に焦がれて~1000チャレ10

健吾が助けた女は、浩一がおぶって救護室まで運んだ。慣れない人を抱きかかえながらの泳ぎをしたせいか、健吾は疲れきって付添人用の椅子でぐったりしている。救護担当のおばちゃんによれば、命に別状はないし、目が覚めたら水を飲ませて、しばらく休ませる…

海に焦がれて~1000チャレ9

今日から再開。ルールはその1を参照。 ------------------------------------------------- 岩場の方に近づいていくと、思った以上に波が強くて、いくら水を掻いても全然前に進まない。海水浴場の遊泳ゾーンから離れると、こんなにも違うものだとは知らなか…